「承認」の仕方を、ロボット教室に学ぶ
ロボット教室でのある生徒との会話。
かなり作るのに苦労するロボットを前にして。
もう少しで完成だが、最後のところで苦労している。
若狭(以下、若)「これ、ここまで一人でつくったんだ、すごいね」
生徒(以下、生)「うん」
若「手を貸そうか?」
生「うん」
一緒に作業していたけれど、パーツが外れて、
一旦分解して作り直さなければならなくなった。
パーツの取付け位置をだいたい覚えている。
今回のように、テキスト通りに造らず、一部だけやり直す時に外れやすいパーツも意識して手で押さえている。
覚えていないところは、テキストの該当箇所を瞬時に探し出して、
それを見ながらつくっている。
3度やり直したが、愚痴らずくじけず、直そうとしている。
若「ちゃんと理解しているからここまでできるんだね。
2年くらい前に入会してきた最初から知ってるけれど、
できるようになったことがいっぱいあるんだね。」
生「うん。できるようになったこともいっぱいあるけれど、まだできないこともいっぱいあって・・・」
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この生徒は、ゴム鉄砲や長い剣を作ってばかりいたり、遊んでばかりなので
「そろそろ今月のロボットを作りなさい」
と言われていたし、
言われそうになると、教室から抜け出して別の部屋で一人かくれんぼをしていました。
そんな生徒です。
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この記事は、「ほめる」と「承認」について書いています。
上の会話で、「ほめる」と「承認」はどれに該当するでしょうか?
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★分析
「ほめる」
・「これ、ここまで一人でつくったんだ、すごいね」
「承認」
・完成前の状態で認めている。
・「手を貸そうか?」と、生徒が一人でできることを前提にした言葉。
・判断を生徒に委ねている。
・若狭が見かねて代わってやらずに、本人にさせている。
・ところどころで手を貸している。
・「ちゃんと理解しているからここまでできるんだね。」
・「できるようになったことがいっぱいあるんだね。」
・それに対する反応をしっかり観察して受け入れている。
★結果
その結果、生徒は自分の今の課題を話し始めた。
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こう見ると、「承認」は、
・どんな状態を前にしてもできる。
・現状までの、行動、努力を認めること。
・相手の主体性、意志を尊重すること。
・見守っても、手を貸しても、どちらも承認。
・自分が知っている一番古い時からの変化を伝えること。
・「相手が喜ぶ」などの波を起こさず、むしろ平坦な会話で思いを引き出している。
その結果、おそらく
・できるようになったことを家や学校で数えてみる。
・若狭の評価(次回ほめること)を期待した行動といった考えをせず、
自分が決めた目標に向けて努力する。
※「ほめられることを期待した行動」とは、
できるだけ目立つようにしたり、ほめられやすいものを作ろうとしたり、
見られているところで張りきったりする、など。
・来月新しいロボットになっても、自分の気持ちに素直に反応する。
おもしろそうだ、と思ったらのめり込むし、
つまらない、と思ったら、一応の義務として取り組む。
のだろうと推測します。
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ロボット教室での、僕のコミュニケーションのルールです。
・普段から僕は、生徒に対して、「ありがとう」と
「ごめんなさい」を言います。
・気づかいをしてくれた生徒には、肩に手を置きながら
「ありがとう」と言います。
・生徒から「ありがとう」と言われたら、
「どういたしまして」と返します。
・ある生徒がパーツを別の生徒に拾ってもらった時には、
「ありがとう」と言うよう促します。
・名前を覚えて、小学生までは下の名前、中学生以上は
名字で呼びかけます。
・ダメなことをした時には本気で叱ります。
・叱る時には、理由もしっかり言います。
・「生徒を守る」を、行動で示します。
「ほかの生徒の権利を侵害する」生徒をきちんと叱ります。
(やっていいことと悪いことの基準を伝える)
・時間が始まってもロボットを作り始めない生徒がいても、
15分間くらいは自由にさせています。
・「手伝って」と言われても言われなくても、
生徒がロボットのパーツに触れる時間になるよう、
目の前のパーツに次第に集中するように、
雑談をしながらパーツの分解を手伝います。
(生徒と二人で共同体意識を持てる)
・ロボットつくりを手伝うときには、生徒より先に進まない。
(誰の責任でやるのか、実感で理解させる)
・話した話題は、できるだけ覚えておきます。
・生徒の家族の話題を話す時は、すごいと思っていること、
センスがいいと思っていること、ありがたいと思っていること
を伝えます。
(否定的なことを言わない)
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「ほめる」よりも「承認」をすることで、
生徒はこんなことを考え、こんな状況じゃないか、と思うのです。
・その場を「安心」と感じる。
・自分の興味に向き合える。集中できる。
・「自分に集中してもよい場」と安心感を持つ。
・他者からの評価をあまりに大切に考えすぎない。
・他者尊重を学ぶ。
・「主体的に考えろ」と言われなくても、普段から考えている。
「承認」の成果は、長期間にわたって観察続けないとわかりにくいかもしれません。
でも、コーチングでいう、
「セッションとセッションとの間の時間が大切」
そのままです。
華々しい成果がすぐには出なくても、声を掛け続けられますので、
「承認」は本人が納得できる成果を出すことができる、といえそうです。
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このところ「承認」について突き詰めているからかもしれないけれど、 この新聞小説の回も「承認」の話。
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